2012年1月29日日曜日

システムトレードで成功するために重要にも関わらず多くの人が無視、誤解していることについて(5)

多くの人が、レバレッジを大きくすれば、リスクは大きくなるかもしれないが、その分(平均的な)利益も大きくなると何となく考えています。 しかしながら、このことは実は誤解であると言いました。
今回から、このことを固定比率トレーディングを例にとってシミュレーションによって議論していきます。

今回は、まずシミュレーションにおける前提と仮定について述べます。

シミュレーションにおいては以下のことを仮定します。

  1. 取引においては、実数単位の取引が出来るものと仮定します。例えば、整数単位の取引だけではなく、2.358単位の取引や0.003単位の取引が出来ると仮定します。
  2. 各トレードの損益額は、独立同一分布に従う確率変数列であると仮定します。
  3. 各トレードの損益額の分布は、経験分布にしたがうものと仮定します。


仮定1,2のもとで固定比率トレーディングを行うと、資産はトレード回数とともに「平均的には」指数的に増加(あるいは減少)していくことになります。

仮定1,2,3についてそれぞれコメントを下に書いておきます。

仮定1は、シミュレーションを簡単に行うために通常導入される仮定です。この仮定のもとでは、固定比率トレーディングの資産増加を過大に見積もることになります。特に資金量が小さいときは、シミュレーション結果が資産増加を過大に見積もる度合いが大きくなります。

仮定2は、各トレード間の相関を適切にモデルに取り込むことが一般的には簡単ではないために導入される仮定です。もし連続するトレード間に正の相関があるようならば、トレードによる資産成長のばらつきを小さく評価してしまうことになります。また最大ドローダウンも小さく評価してしまう可能性があります。

仮定3は、非現実的な仮定かもしれません。各トレードの損益額の分布が何らかの分布に従うと仮定し、過去のトレード結果から、その分布のパラメータを決めるというやり方の方が適切かもしれません。しかしながら、この場合には、「何らかの分布」を仮定しなければならず、その仮定が現実的であるという保証はありません。結局、仮定3に関する部分は大胆な仮定をおくしかなく、今回は仮定3でシミュレーションを行うことにします。

2012年1月22日日曜日

システムトレードで成功するために重要にも関わらず多くの人が無視、誤解していることについて(4)

前回の続きである

「FXのような売りからも買いからも入ることの出来るレバレッジのかけられる証拠金取引の場合は、固定比率トレーディングはどう考えるべきでしょうか?」

という部分から始めたいと思います。

固定比率トレーディングとは何かについては前回の記事をご覧下さい。

ここでは、FXでの固定比率トレーディングを以下のように考えることにします。

  1. 1ロットのトレードで発生する可能性のある最大損失額の絶対値を1単位と考えます。
  2. その最大損失が発生したとき、投資した額がすべて失われたものと考えます。すなわち、1ロットのトレードは、1ロットのトレードで発生する可能性のある最大損失額を投資していると考えるわけです。なので、例えば、トレードにより最大損失の絶対値に等しい利益が発生したときには、投資した額が2倍になって回収できたと考えます。
  3. このように考えて、トレードで生じる可能性のある最大損失額、すなわち、トレードするロット数*1ロットでの最大可能損失額の絶対値が、現在の証拠金(=資産)額の何倍になっているかでポジションの大きさを計ることにし、そのポジションの大きさをfで表すことにします。すなわち、現在の証拠金がトレードで生じる可能性のある最大損失額の4倍であるならばf=1/4=0.25になります。


このようなfを考えたとき、fが大きいほど大きなレバレッジをかけてトレードしていることになります。

以前、以下のことを述べました。

多くの人が、レバレッジを大きくすれば、リスクは大きくなるかもしれないが、その分(平均的な)利益も大きくなると何となく考えています。

しかしながら、このことは実は誤解であると言いました。



これは固定比率トレーディングの言葉で言えば、

多くの人が、「fを大きくすれば、リスクは大きくなるかもしれないが、その分(平均的な)利益も大きくなる」と何となく考えています。

という表現になります。

これが正しいのかどうか次回から見ていくことにします。

2012年1月16日月曜日

システムトレードで成功するために重要にも関わらず多くの人が無視、誤解していることについて(3)

前回、

「適切なレバレッジ」に関しても、多くの人が誤解をしています。
多くの人が、「レバレッジを大きくすれば、リスクは大きくなるかもしれないが、その分(平均的な)利益も大きくなる」と何となく考えています。
しかしながら、このことが実は誤解である

ということを述べました。

今回から、このことが実は誤解であるということを論じたいと思います。

ここでは厳密な議論を行うために、

トレードでのレバレッジのかけ方は固定比率トレーディング(fixed fractional trading)にしたがって行う

ということを仮定します。

固定比率トレーディングとは、

常に現在の総資産の固定比率f (0 <= f <=1)を投資にまわす利益再投資を行う投資法

のことです。

この固定比率トレーディングは、投資法としてはかなりアグレッシブなものかもしれませんが、考え方としてはまあ自然なものではないでしょうか?

固定比率トレーディングは、元々株式等への投資への考え方から生まれたものだと思いますが、FXのような売りからも買いからも入ることの出来るレバレッジのかけられる証拠金取引の場合は、固定比率トレーディングはどう考えるべきでしょうか?
これについては、次回お話します。

2012年1月7日土曜日

システムトレードで成功するために重要にも関わらず多くの人が無視、誤解していることについて(2)

前回、システムトレードで長期に渡って利益を積み上げていくためには、「優れたシステムを使うことが前提になる」。
しかしながら、「この前提には、その前に絶対に必要とされる更なる前提があります」ということを述べました。
さらに、「多くの人はその絶対に必要とされる更なる前提の方を見落とすか、あるいは、無視しています。」ということも述べました。

その「更なる前提」とは、何かお分かりになったでしょうか?

答えは、「適切なポジションサイズを取る」ということです。
これは、言い換えると、「適切なレバレッジを取る」、「適切な資金管理を行う」ということです。
これは、システムトレードで長期に渡って利益を積み上げていくためには絶対に必要とされることなのですが、多くの人はこのことを見落とすか、あるいは、無視、軽視しています。



では、「適切なレバレッジ」とは、どのようなものでしょうか?

「適切なレバレッジ」に関しても、多くの人が誤解をしています。

多くの人が、「レバレッジを大きくすれば、リスクは大きくなるかもしれないが、その分(平均的な)利益も大きくなる」と何となく考えています。

しかしながら、このことが実は誤解であることを次回から示していきたいと思います。