2012年8月18日土曜日

確率論における3つのタイプの収束定理(4)

3つのタイプの収束定理の2番目の中心極限定理 (Central limit theorem)について論じます。
 
中心極限定理とは、言葉で説明すると以下のようになります。
 
互いに独立で同一分布従う確率変数列を考えます。
その確率変数n個の標本平均と平均との差にnの平方根をかけて得られる確率変数の分布は,nが無限大に近づくとき,平均が0で、分散はもとの確率変数の分散と等しい正規分布に収束する。
 
この中心極限定理も、いろいろな場合に拡張されています。
 
上で行ったような操作、すなわち、ある形のスケール変換をして極限をとれば、普遍法則が現れることは、現在では数学でも物理学でもいろいろな場面で知られています。中心極限定理はその最初のものであるといえます。

2012年8月5日日曜日

確率論における3つのタイプの収束定理(3)

確率論における3つのタイプの収束定理(2)でも書いたように、大数の法則はいつても成立するわけではなく、その適用には注意が必要です。
 
例えば、大数の法則は期待値の存在を仮定しているため、独立で期待値の存在しないような分布にしたがう確率過程については大数の法則の適用は適切ではありません。例として、安定分布においては特性指数が1以下の場合は期待値は存在しませんので、そのような分布にしたがう独立な確率過程に大数の法則を適用するのは適切ではありません。
 
一方、有限な期待値を持つ独立同一分布(independent and identically distributed, 略してi.i.d.と表記されることもあります)にしたがう確率過程以外で大数の強法則が成立することが知られている確率過程にはどのようなものがあるでしょうか?
そのようなものとして、例えば、マルチンゲールと呼ばれる確率過程があります。マルチンゲールにについては、大数の強法則が成立することが証明されています。